暗い安ホテルで眠ろうと思った/虹村 凌
 
過ごそうと思った
窓の光も入らない暗い暗い新宿の安ホテルで
外界全てをシャットアウトして過ごそうと思った

一番上等な服を着て
其れ以外の服をホームレスに全部渡して
笑顔を写真に納めて廻る
世界が途切れて仕舞えば何の意味も無いと言うのに
ただ幾つかの笑顔の為に全てを捨ててみる

変わった女を連れて歩くだけで陵辱されるような世界
時計仕掛けのオレンヂよりも異常で奇妙だと思った
常に誰かが誰かを見張る様な閉塞感で一杯の世界
爆弾仕掛けのオレンヂで全て吹き飛べば良いと思った

世界が途切れる最後の日をラブホテルで過ごそうと思った
窓の光も入らない暗い暗い新宿の安ホテルで
外界全てをシャットアウトして過ごそうと思った

堅い堅いベッドの上で暢気なバラエティー番組を見ながら
煙草を何本か吸って缶珈琲をすすり
手も洗わずテレビも消さずに眠ろうと思った

暗いラブホテルで眠ろうと思った
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