チェジ/ピッピ
て
誰もがチェジの手を離すと寂しそうな顔をする
手を離すときにチェジはにこっと笑って
私のこと忘れないでね、と言う
どこにも消えないのに
どこにも消えないはずなのに
チェジは頭を撫でられるのを嫌がり
人の頭を撫でるのがとても好きだ
チェジに撫でられるとみんな変な顔をしてどうもありがとうと言う
チェジは神様みたい
仏の顔も三度までだけど
チェジの頭は一度もダメ
いい匂いなのに 今日も蝶だけがチェジの頭に触れるのを許されている
チェジに欠点はない
あるとすればかわいすぎるところ
かわいすぎて電車が止まったりするところ
でもだれも困ってない
チェジには夫以外の家族がいない
名前はチェジが自分でつけた
自分の好きな文字を並べただけ、とチェジは笑った
あたしたちの国のことばで「太陽」という意味だった
チェジの話はまだまだたくさんある
でもチェジは自分の話をあまりしたがらない
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