愛を、つぶやく/七尾きよし
ゆっくりと でも確かな感触で
彼の言う愛というものが
いつのまにか私のからだを包みこんでいた。
飛び込んでいいのだ。
わたしは愛されるべき存在なんだ。
そんな十年来のわたしの
想いがあっという間にはじけ散って
大きな白い光がずんずん近づいてきて
気づくと彼の胸の中にいた。
ある夜彼はエレキギターを叩き割り
奇声をあげながら暴れまわって
ガラス窓をこぶしでぶち抜き
悶絶しながら いつしか気を失った。
愛よ。ぼくを愛しておくれ。決してぼくを見捨てないでおくれと。。
わたしは病院のベッドで横たわる彼の寝顔の横で
愛してるってつぶやいた。
あいしてるってつぶやいた。
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