翡翠の眼に映ったもの/逢坂桜
 

もしかしたら
それでも貴方は
人間を信じていたんじゃないか

幼い頃から、富と権力と横暴さを、
いやというほど見てきた人だ

人間の純粋さに接して、醜く汚いものばかりに囲まれて

そして、ささやかな絆さえも、圧倒的な力で奪われた

すべてを失った貴方は、すべてを手に入れるべく、闇に身を沈める

富と権力と名誉を

人に踏みにじられ、濁る水を飲み干し、己が手を血に染めてさえ、

孤高な貴方は、すべてを手に入れた

だが、それもまた、

貴方のやり方で、
世界をまもろうとしたのではないか?

たった一人の肉親に、それをはばまれた

弱かったものが、強い己を超えていく

それは喜びではなかったか?

そして、

もしかしたら、
それでも貴方は、
人間を信じていたんじゃないか

と、思った

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