パリへの逃げ道/殿岡秀秋
駐車場におりる階段がある。そこをくだっていくと、踊り場に鉄製の錆びた扉がある。それを押し開けて電気をつけて階段を駆けておりる。二人の息遣いがかび臭いコンクリートの壁に反響する。また、扉があって開けてはいる。そこは広い通路になっていて、壁がレンガ造りでたわんでいる。地震がきたら崩れそうだ。まるで大腸の中を歩いているような感覚にとらわれる。突然、明るくなってメトロの駅の改札口に出る。フランス語の表示。ここはパリのメトロだ。メトロに乗れば、もう追ってはこないと娘に告げる。娘はルーブ美術館に行きたいという。ぼくはメトロの切符を二枚買った。
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