ポップな生煮えの憂鬱/
大覚アキラ
真昼の路上で、水溜まりがゆっくりとその温度を上昇させてゆくのを眺めながら、
チェリーソーダに浮かべたバニラアイスをストローでもてあそんでいる。
グラスの表面についた水滴が、この途方もなく退屈な世界を無限にコピーする。
誰かが囁きあう声と、信号を突っ切る消防車のけたたましいサイレンが、
耳元で溶けあってドロリとした和音になって頭に流れ込んでくるのを感じる。
そう言えばもうずいぶん昔に、帰る場所なんて忘れてしまった。
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