水花火/
コトリ
紫陽花の頃
手をつないで買った気早な花火に
火を点すことは結局なかった
意地をはる間に夏は去り
空は遠のき
てのひらはかじかむ
(恋は続いていた)
目印か
呪いのような
燃え損ねた花火
捨ててしまおう
来年が つぎの夏がきたとしても
とうに 湿気ている
(恋は続いていた)
念のため
花火の束にシャワーを浴びせた
手間をかけずに
水を張ったバケツにでも
浸しておけばよかったのに
それについては
なぜ
[
次のページ
]
戻る
編
削
Point
(6)