雀のなみだ/唯川
 
挨拶が微弱すぎて響かなかったとしても


散歩の帰り道に賢者がいた
うす汚れた灰色のローブが汗を吸い
地を削るようにしてひたすら足踏みをしていた


 もしもし、ドチラへ向かうのですか
  ドコへも行きません、ココへ行きたいのです
 あらまあ、それは大変でしょうね
  えゝ、どうしても進んでしまいます。ところで
 なんでしょう
  紐の先はご主人ですか


近くない遠く東のほうで
子犬だった褐色が人を喰らっている
私は今まで
散歩
していたのか させられていたのか
はたまた子犬そのものだったのか
ちぎれたリードはへその緒とも思えず
もてあましては

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