非・定型/岡村明子
 
家族の写真がない

両親が離婚すると決まったとき
それでも家だけは誰かが守るだろうと信じ
写真はすべて置いてきた

そしてすべては処分されたと聞いた

いつかここに帰るかもしれないという希望は
文字通り灰となって消えた
数年前のことだ

自分が気に入って持っていた小さいころの写真が
三葉だけ残っている
私と父
私と弟
私と母
の写真だ
四人で写っているものはひとつもない

家族のことを訊く人は
家族が少なくとも「ある」人だ
私の心の中で家族という鏡は粉々に砕けているので
家族の像を結ぶことができない

父の本棚にアルバムを見つけたので
悪いと思い
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