プリズム/銀猫
ポストがあんまり赤く誘うから
こっそり仕組んだ悪戯めかして
宛名にきみの名前を書いた
雪があんまりひっきりなしに
きみの傍に寄り添うから
水晶の珠を割って
ちいさな虹で
憂欝の左手を熱くさせた
届いた、と笑う
きみの短い知らせは
何処か少し上気して
肩の雪が
しゅん、と融けた気配がする
遅れがちな春なら迎えに行こう
ヒアシンスの水栽培を
日なたに移し
硝子瓶のプリズムから
両手に蓄めた七色を持って
目論みを知らない北風は
ふたりの距離に
まだ安心しているらしい
決めた
迎えに行くんだ
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