ホワイトアスパラガス/蒼木りん
 
自分の寝息の音で目を覚ます
確かに呼吸していた
口を開いたままで
もう聞こえない

ずいぶん
永く寝た気がしたのに
車の時計を見ると
十分くらいだった

それが
三回くらい

変な想像をした
人の顔が
しだいに鬼になるのだ

微笑み話している相手の顔が
皆鬼の形相に変わる

わたしに
どんな落度があったのですか
そんなに
無駄に恨まれる覚えといえば
あなたの見栄と虚栄でなくて
なんなのですか

寒い
スーパーで
ホワイトアスパラガスの缶詰を買う

わたしは
その駐車場で
見栄も外聞もなく
口をあけて寝てしまうほど
疲れているんです

もしも
車の中で死んでしまったら
口が開いたまま

それはいやだ
死顔など見られたくない
それはただの骸なのだから

魂の熟さぬままに
身体の寿命が耐えた

ホワイトアスパラガス
みたい


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