知床/北原春秋
知床
疾風怒涛の波が吹き
今日も浪の花が空を飛ぶ
問わず語りの幻と癒しの大地・・・知床
あれは野犬の群れの一匹だったか
薄寒い晩秋の斜里の街角で
確かに奴はいた
妙に存在感のある眼で
俺を見つめていたかと思ったら
突然、うなり声をあげ
牙をむいた一匹の野犬
「お前何しに来た
知床はぼんやりと観光ついでに
仕事をしているような
お前の来るところじゃないぜ
知床はそんな甘いもんじゃねえし
都会人面したお前らが
来るところじゃないんだ」
牙をむいた一匹の野犬は
牙を閉じた
そして
静かに、静かに佇んでいた
ああ、これが
小春日
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