小詩集「なんでだろう」/たもつ
って
小さな人たちが歩いている
のぞき込むと手を振るので
手を振りかえしたら
びっくりした顔で
逃げていった
ムッ
いったい人のことを何だと思ってる
○夏の終わり
満員の通勤電車
誰かがひぐらしの鳴きまねをした
カナカナカナ
ああ、夏が終わるな、と思った
隣のおじさんが
夏が終わるな、と呟いた
○なんでだろう
一昨日から変なオブジェのようなものが
私につきまとって離れない
それは
なみなみの
あみあみの
ごろごろで
どこか身体の具合が悪いせいかもしれない、と
病院に行っても医者は
ああ、うん、ごにょごにょ、と言うばかりだ
会社では皆、私にオブジェがついている
のが当たり前であるかのように
あみあみを指で伸ばしたり
ごろごろをもてあそんだりする
それにしてもなんでだろう
お茶をすすりながら
隣にいる小野田さんのオブジェを
指でぷにゅぷにゅしている
戻る 編 削 Point(17)