小詩集「なんでだろう」/たもつ
 
って
小さな人たちが歩いている
のぞき込むと手を振るので
手を振りかえしたら
びっくりした顔で
逃げていった
ムッ
いったい人のことを何だと思ってる



○夏の終わり

満員の通勤電車
誰かがひぐらしの鳴きまねをした
カナカナカナ
ああ、夏が終わるな、と思った
隣のおじさんが
夏が終わるな、と呟いた



○なんでだろう

一昨日から変なオブジェのようなものが
私につきまとって離れない
それは
なみなみの
あみあみの
ごろごろで

どこか身体の具合が悪いせいかもしれない、と
病院に行っても医者は
ああ、うん、ごにょごにょ、と言うばかりだ

会社では皆、私にオブジェがついている
のが当たり前であるかのように
あみあみを指で伸ばしたり
ごろごろをもてあそんだりする

それにしてもなんでだろう
お茶をすすりながら
隣にいる小野田さんのオブジェを
指でぷにゅぷにゅしている







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