白梅/佐々宝砂
白百合の季節ではないから
梅の枝を切ってきた
山の梅だから
きっと白い花が咲くだろう
ほんとのことをいえば
白い花はあんまり好きじゃない
私が好きな花は深紅の彼岸花で
それも墓地やなんかにわんさと生えて
ゴギブリ並の生命力を見せつけるようなやつなのだ
なのにいつも白い花を活けるのは
あのバカたれへの嫌味で
あのバカたれが気付いてるかどうか知らんが
そもそもあのバカたれはもう私を見てないんだし
私の自己満足でかまわねーのだ
玄関先に活けた梅の枝は
オアシスという名の地獄にいましめられ
それでも少しずつ蕾をふくらませるだろう
蕾はやがてほころび白い花びらをこぼ
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