春の小瓶/
十六夜
春が恋しくなりまして
春の小瓶を
手にしました
おばあちゃんがくれた
春の小瓶
春の素が入っています
茶色の
春には似つかわしくない色ですが
少し箸で取り
カフェオレボールに入れまして
お湯を少し注ぎます
ふわぁっと香る
春の風
飲み乾せば
春の息吹が
身体に溶けます
春の小瓶は
雪解けの
春一番が来る前に作るのと
おばあちゃんは
言いました
生きるという
命を刻み
詰めるのと
今は寒い寒い冬です
春が恋しくなりまして
春の小瓶を開けました
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