春の小瓶/十六夜
 
春が恋しくなりまして
春の小瓶を
手にしました

おばあちゃんがくれた
春の小瓶
春の素が入っています

茶色の
春には似つかわしくない色ですが
少し箸で取り
カフェオレボールに入れまして
お湯を少し注ぎます

ふわぁっと香る
春の風

飲み乾せば
春の息吹が
身体に溶けます

春の小瓶は
雪解けの
春一番が来る前に作るのと
おばあちゃんは
言いました

生きるという
命を刻み
詰めるのと

今は寒い寒い冬です

春が恋しくなりまして
春の小瓶を開けました
戻る   Point(3)