中塩鮭/ミキ・オキタ
塩鮭を食べていると
中央線をめくっているような気分がするのです
軽く焦げて乾いた皮を箸でつまみ
スズ色をはがしていくその下にあばかれるニスのような脂身のツヤ
崩れる鮭の肉
自転車置場から全速力で汗だく酸欠で駆けてきたのに
非情な駅員は目もくれず
ポンプでため息を追い出して閉まるドア
指先数センチで流れた液体が飛び込む
ちょっと塩味がききすぎていないか
無論
中央線に乗っていると
塩鮭に呑まれて
がたんごとん
しょっぱい海のむこういっぱい
運ばれていく気分
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