彼と彼女のボストン/紀ノ川つかさ
 
それは十二月二十四日のこと
日々忙しい二人も、この日だけは会おうと
どうにか予定を空けて待ち合わせた
場所が学生街も近い高田馬場とはいえ
こぎれいな店はどこも予約で一杯で
二人はしかたなくファミレスに入った
気取ってちょっと高めのステーキを注文
ところが出てきたものときたら
肉はともかくスープはお湯みたいなコンソメで
しかもつけ合せはモヤシ炒め
スーパーでのモヤシの安さを知っている二人は
まるで要領の悪い自分達が笑われているように感じた
せっかく今日の日、会えたというのに
二人はケーキでも食べようと
駅前にある「ボストン」という喫茶店に入った
大きなガラス窓から見える
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