ドラマを観ていて考えた事/和泉 誠
金田一耕助は、
はたして自分が小説の主人公だと思った事はないのだろうか?
あまりにもよくできた巡り合わせ。
きっと彼はそれを疑うことなく
現実として受け止めているだろう。
彼にとって目の前で次々と起こる殺人は紛れもない現実で、
その謎を解くのは紛れもない本人の意志。
誰かが金田一耕助という主人公に謎を解かせているとは
彼は夢にも思わない。
優れた文学作品とは非常にリアルに作られている。
細部まで精密に本物そっくりに。
人間の複雑な思考回路までそっくりに。
もしも自分がその作品の登場人物であっても、
違和感を感じない程精巧に。
しかもそれらは一昔前を舞台にして
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