長詠/比呂正紀
 
古里の小高き丘の菩提寺に

 雪をかむりて立ちあらむ

 墓石(いし)に刻まれし名のありて

 生きた証の名のありて

 香華の絶ゆるなかれとぞ

 過ぎし時をぞ思いたり

 十余年経つあらたまの

 今年も我のながらへて

 浮世の水を啜るとは

 吹く風の音の囁きを聴く


あらたまの年を迎へる慶びを分かつ者あり 幸いと云ふ


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