六月のバラッド/狸亭
風まじりの雨模様に海はのんびりひろがる
はてもなくさわがしい世間をのがれて
ぬれた花崗岩に足をすべらせおもしろがる
生きてきたそれぞれの体型に目がなれて
だまっていてもあたたかい空気にふれて
むかしの男たち女たちの耳にきこえる鋭い
海鳥の一瞬の声 虚空にたちきられて
鬱蒼とした色のこい樹木の影がなつかしい
すっかりモダンないろどりにすりあがる
高原の駅の昔の風情はもうなくなって
改札口をでいりする人のむれをめずらしがる
いつしか髪の毛もうすくなりしろくなって
何を待ったのか樹齢一三〇年の榎をみあげて
空にながれる雨雲 霧の中のまわり舞台
ひとり ふたり すぎた時
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)