キリコ遠く(改)/AB(なかほど)
 
 今年の鮎う ちっこおてえ、
 
 夕方
 小さい頃から毎年聞かされてきた
 親父の秋を告げる声

 ここ数年は

 空港工事で もう釣れんわいね
 
 と続く


 車で2時間の街に住んでて
 毎週末には帰ってくればいいのに
 元気な顔で帰ってくればいいのに
 それは判ってるけど
 帰るときにはいつも自分であきれるほどの
 疲れきった甘ったれで
 労いの言葉を待っている

 そんなこと
 親父には
 ましてやお袋には
 手にとるようにわかってるのだろう


 とくに変わり映えのない夕食をしてると
 テレビのローカル・コマーシャルで

[次のページ]
戻る   Point(7)