ぼくが包茎だったころ/ZUZU
なゆめにあまく苦しめられることもない
手術は成功した
たったの十五分のことだった
世界は塗り替えられた
象の鼻は長く
しまうまのもようはしましまで
あのひとはお嫁にいくという
相手は清潔で美男子なサラリーマン
新婚旅行はアフリカではなくオーストラリアらしい
ぼくはあのひとに告げることが
あったような気があんなにしていたのに
なに?って
くびをかしげるあのひとのまえに立つと
何もかもが恥ずかしく
なんでもない、おめでとう、って
ただ股間をそっとかくすしかないのだった
ぼくが包茎だったころ
包茎は雑誌広告のように
簡単な手術で治るものだと思っていた
だけどそれは間違いだった
包茎はけっして手術では治らなかった
いまでもぼくは
とおいアフリカで
八本足の象の群れが行進していく音をききながら
あけてもくれても
あのひととセックスしまくる夢を見る
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