十五分の手紙/松本 涼
 

僕は手以外は自分で気に入っているところがあまりないのです


今運河の上をモノレールが通りました
その後姿を見ているとまるで僕の体も運ばれそうになります
出来れば運ばれたいとも思います


誰かが走ってやって来ました
会社の人です

上着も着ないで急いでタバコを吸いに来たようです
今会社は一時的に禁煙なのです

「寒いですよね」
僕は話しかけてみました
「ああ」

それから二分くらい二人とも無言のままです
会社でもあまり話したことのない人です

しばらくしてから寒さに耐え切れなくなった彼は
「もうダメだっ!」
と叫んで会社に走って行ったので
僕は少し笑いました

本当に今日の風は冷たいのです


もうそろそろ時間なので
僕も会社に戻ります
せっせせっせと働くためです

だけどやっぱり僕は
君が同じ空の下にいるなんて信じられません





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