おもちちち/yangjah
 
この前の冬はおもちを毎日食べた
おもちを食べると
おちちの出がよくなるそうな
わたしにまだ赤子はいない

街へとつながる列車が途切れた日の夜
あたらしいいのちが
友だちのカラダを通って来た
足からこの世に現れた
きっと大地に根ざした子になる

「おもち食べや〜」
毎朝声をかけてくれる人は
生まれた時からわたしにはいない
おじいちゃんのような人
いつのまにかこの地は
春を飛び越えて
熱帯を思わせる初夏へと向かう
八十八夜に
季節も何もかも超えて
あの世へと向かう

ストーブも隅に追いやられ
男たちは半袖ではたらく
おもちを焼いていた季節が
はるか遠い
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