ある冬の日/和泉 誠
 
あの人を待っている
約束の時間まであと5分くらい
もう30分以上前からここにいる

寒空の下
手には毛糸の手袋
雪の積もったベンチには座れない

道の向こうで子供が転んだ
わぁーと顔を真っ赤にして泣き出す
大丈夫かな?あの子
私はついつい駆け寄ってしまう

幸いケガはない
すぐに泣きやんで
また笑顔で駆けていった

ふと見上げると
道の向こうにあの人の姿
遠くを見ながら煙草を吸っている

「お待たせ」

30分以上も待っていた私の気持ちが
伝わらないのがすごく悔しくて
私は手にした小さな雪玉を
振り向いたあの人に思いきり投げた

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