ホワイトあうと/瓜田タカヤ
都会で飲み干すレモンティーの味は
遠い昔に知った苦い夏の香りがした
冷えた手のひらを何度も拭いて
汚れていない事を何度も確認した
もしも世の中の全てが
黒く
艶めかしいハンカチーフだとしたならば
初めから私はその全てで
何か話すほど何かが閉じこもる
命はショーケースの中に
収まらないのよと幽霊が言った
命は敷き詰められた小菊
薄い子供の頬のような色だった
私のいる場所の形とか
冷たく
柔らかい吹雪に満たされたら
初めから私はその全てで
とぎれる生命の始まりに戻されそう
きっと新しい世界でも揺りかごは
面白く浮かび上がりはしないでも
冷えた身体をハンカチーフが温めてくれる
それが母胎の温度である事を知りたいわ
初めから私はいない全てだから
アナタの笑顔を喜ぶ意味もいらないわ
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