まったくもう/麻草郁
君は新しいシーツと枕カバーを買って、家に帰って床に散らばった本やら雑誌やら紙やらを整理して、引っ越し以来開けてない段ボールを開けて閉めて、シーツと枕カバーを新しいものに取り替えて、手を洗って顔を洗って、パソコンの前に座って電源入れて、メールチェックしてほくそえんで、お茶を煎れて飲んだ。
君が今、パソコンの電源を入れたのは、こういう理由だ。君は先日ある人物から「スローターハウス5が好きです」というメールをもらった。なんとも恥ずかしい事にカートヴォネガットジュニアの書いた本を1冊も読んだ事のなかった君は、顔面を赤黒く紅潮させて「スロ−ターハウス5」と「ローズウォーターさんあなたに神のおめぐみを」
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