碑(いしぶみ)/こしごえ
蔓薔薇が石塔に深く絡まっていて
霧に浮かびあがり声をもらしている
清らかな
石塔には
老人の深遠な目でこう刻まれていた
?在る可(べ)し?
霊園の霧は
空中に充足した空虚な交わりの白い闇で
わたしを並列化して開けている
しなやかな翼の
旋回する風速の内に
浮遊する架空の瞬き
鮮烈なる青き成層圏
霧にかすんでいる太陽が
へんに白くにじんでいる
あの空で
蔓薔薇は歌声へと上昇していき
石塔がしびれてゆらぎ震え始めた
わたしはこの地でワルツを踊ろう
戻る 編 削 Point(13)