碑(いしぶみ)/こしごえ
 
蔓薔薇が石塔に深く絡まっていて
霧に浮かびあがり声をもらしている
清らかな

石塔には
老人の深遠な目でこう刻まれていた
?在る可(べ)し?

霊園の霧は
空中に充足した空虚な交わりの白い闇で
わたしを並列化して開けている

しなやかな翼の
旋回する風速の内に
浮遊する架空の瞬き
鮮烈なる青き成層圏

霧にかすんでいる太陽が
へんに白くにじんでいる
あの空で

蔓薔薇は歌声へと上昇していき
石塔がしびれてゆらぎ震え始めた
わたしはこの地でワルツを踊ろう



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