時計の針は戻らない/和泉 誠
 
上京した弟が半年ぶりに戻ってくる
迎えに行くついでに挨拶に立ち寄った
離れて暮らす祖母の家
久しぶりに二人が我が家にやってきた

今夜はすき焼きとお寿司
コンビニ弁当とファーストフードには
うんざりしたと洩らす弟のため
元旦というので祖母は一人で作った
黒豆となますを披露した

弟のコップに親父からビールが注がれる
僕は母さんと一緒にコカコーラ
ゴクゴクと喉を鳴らして飲んでから
弟は東京での話をする

帝国ホテルでの出版社の忘年会
著名な先生達が集まって
大好きな先生からサインをもらった

喧嘩をすると絶対僕には勝てなくて
泣いてすねてばかりいた弟の面影は
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