或る夜の/馬場 こういち
 
こんな夜にも
赤いランプは燈っている

四角い机の けたたましく電話の鳴る
また事件かな と思いました


ちょっと待っていなさい


アタシ
ごめんなさい 仕事中に
きいてほしいことがあるの

一瞬 胸に不安のよぎり

いまさっき アタシ
アナタの詩を読んでいたの
きのう アナタの書いた
そうしたら
そうしたら あの子
あの子 にっこり笑ったの
ふり向いて あの子
にっこり笑ったの
アタシの袖を引っぱって
人差し指を 立ててみせたの  
にっこり笑ったの

はなす声のふるえていた


あの子は
小さな箱の中で
あの子は
ずっと 
[次のページ]
戻る   Point(5)