オブジェ 「歌う男」/AB(なかほど)
歌うために作られた口が開きっぱなしだ
それもそうだろう
その目に映る多くの人達が
この街に生まれ来る子供達のために
何を残してゆけるのだろう
なんてぐらい難しそうな顔をしながら
紙屑や吸い殻なんかを残したりしてる
後ろを見てごらん
大きなビルが見えるだろう
ニッカポッカを履いて僕等が命懸けで作った
あのビルの竣工式に僕等は呼ばれなかった
それでも青空に聳える姿を見る度に
夜空に彩り並ぶ窓の明りを見る度に
誰よりも誇らし気になっている
君に命を吹き込んだのも
君の足下に刻まれている名前の先生だけじゃない
君をこの場所に立ち上げた
汗や埃まみれの笑い顔達を覚えているだろう
今度 見かけたら
君の中で燻っているものを
彼等に歌ってみたらどうだい
と思うんだが
さて
歌うために作られた口が開きっぱなしだ
これからここでギターケース広げるから
一緒に歌ってみるか
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