6等/蒼木りん
正月も正月でなくなってしまったのは
私がこの会社に勤めだしたからだ
貧乏になってゆくのもその所為なのかもしれない
世間の時間と隔たりのある
折り合いのつかない裏の世界だ
暮れの掃除もしていない
正月も誰かが用意するものと
どこかで思っている
世間は今夜も
茶の間でゆっくりテレビを見ている
私はパソコンで
瞬間移動の旅をし
別室に帰る
仕事は我がためでなく
利便性を求める人々のため
会社の利益のため
その見返りにしては
待遇があまりに良くない
いったいいつから
人の背中に凭れるのをやめたのだろう
腫れ物に触るように接するあの人
さりげない逃げ方を
このまま
悟られなければいい
愛はここにあるが
恋は未熟なほど多くを求め
また変化していくもの
他人の望むことを想像するより
自分の欲するものを目指せと
声がする
明日は
三時に起きて
神様とやらに
本音を疎通させてこなければならない
「去年の私の頑張りは 300円でよろしいですか?」
私はたぶん無欲で
棚ボタを待ち続けているのではない
と
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