手向け(骨)(糸)(雪)(暁)/蒸発王
『どアホ』
と
小声で呟いて
微笑んだ
悔しい事に
俺は何となく悟った
この銀色になったダチが欲しかったのは
俺がかせいだ
百人分の笑いではなく
この
不器用な女の
はにかんだ微笑だと
俺は何となく悟った
少し迷いながら
あの女の肩を抱いて
もっと前を向いて笑え と
涙交じりの声で呼びかけてしまった
畜生め
俺の負けだ
十二月十五日
夕闇の雑踏の中
見知った顔を
捕らえた
気がつくと
アタシは彼女の腕を掴んでいた
【手向け】−12.5 糸−
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