それは怖い夢物語『不思議な糸』/和泉 誠
 
大きく聞こえる
針はゆっくりと私の尻尾へ近づいてくる
「みんな起きろ!!!鬼婆じゃぁー!!!」

「なに!?鬼婆?」
「どこじゃ!?」
「鬼婆!?鬼婆!?」

シュルシュルシュル
ものすごい速さで糸だけが障子の中へと吸い込まれていった
私はそれを追いかけて障子をガタンと開けた
はたしてそこには何もいなかった

「ははは。笑えん冗談じゃあ、太郎さん」
「太郎、見てみぃ。まだ夜明け前じゃ」
やれやれとみんなは布団をかぶり
また寝息をたて始めた
私はその晩ずっと障子のもとに立って見張っている事にした

二週間後、同じ仲間たちが同じように古寺に集まる
そこに太郎の姿はなかった
「太郎さん、やって来んなぁ」
「わて、太郎さんの腹太鼓好きやったのに」
四郎はそれを聞いて一人青い顔をしていた

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