見上げる/フユナ
て
ピカ、ピカ。
またここで
ピアニカの音がひよめいている
ほんの すこし、
見上げたそれに吸い込まれ
(見上げないときの
指先に充満し)
(うつむいたときの
つま先に充満して)
ピアニカは
いずれかへ
音の持ち主からいずれかへ
たゆたってゆくようだった
空ではなく
ほんの すこし
見上げたそれに吸い込まれて
それは、
輝いている
突き刺した針のように
いずれは
波打って曇り掠れて
朽ちていく
が今は、
輝いている
標本の虫ピンのように
それを
見上げる
見上げる
ほんの すこし
首を上向けて
だってそれが、
美しいのだ
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