泳/蒼木りん
たどり着いた島で
ひと休み
ここも
朝日とともに沈むから
また次の島へ泳ぐ準備だ
大陸まで
あとどのくらい
あと
どのくらい
そもそも
大陸なんてあるのか
そんなもの
いつまでたっても
見えやしない
船で旅する技を
誰に学べばいい
豪華客船に乗る奴も
いるのに
しょっぱい波に揉まれて
私はいつか
鮫にでもなるんじゃないだろうか
夏には
イルカ気取りもできるけれど
こんな冷たい波で
肌も厚くなる
きのう
たどり着いた島で
月の出る時差を計る
むかし
同じ月の日に
アスファルトを歩いた記憶
泣くのは情けないと
誰かが叱る
私は
泳ぎつづけるが
魚にはなれないのだ
虚しさの
どのへんであきらめる
人工の灯りも
見えそうで見えない
意識下で
通りかかる船をさがしている
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