首輪/和泉 誠
 
あなたに隠し事なんてできない
24時間私が何してるかなんて
あなたは全部お見通し

でも私にはあなたが見えない
あなたから毎晩届く手紙は
何十にも秘密の魔法がかけられていて

私はそれを書き写したり
透かして見たりして
どうにかしてこじ開けようとする

手紙に仕掛けられた解釈の糸が
ぐちゃぐちゃに絡み付いて
私の心はもう身動きさえできない

おかげで私は24時間
始終イライラしていなきゃいけない
こんな私の姿さえお見通しなら
あなたは相当意地悪な人

いくらあなたが
大きな力を持っているからって
こんなになるまで私を
いじめる必要はないでしょう?

可愛い人と言うのなら
黙って優しく抱きしめてよ
それともなに?
私には涙の方がよく似合うの?

どこかへ逃げようにも
心を縛られていたら遠くへは逃げられない
不安と焦燥で時を過ごす
ほんのわずかな期待だけを食べて

逆らうことのできない力の言うがままに
私は屈辱の嗚咽を漏らしながら
ただあなたからの次の手紙を待つ

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