未完の歌/和泉 誠
 
ぱりお客さんはとても怒った
「そんな奴らは見たくない!」

だって可哀想じゃない!

あなたはそんな必死な私を見て
ただ優しく微笑んでいた
これは困ったなという顔をしていたけれど
それでも、私はうれしかった

お芝居も後半に差し掛かり
あなたは時計を気にしだした
あなたはこのまま行ってしまうの?
そんなの嫌!絶対に嫌!

でも私には
あなたのコートの裾を掴む勇気なんかなくて
一体どうしたらいいの?
その言葉だけを呪文のように何度もつぶやいている


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