未完の歌/
和泉 誠
ぱりお客さんはとても怒った
「そんな奴らは見たくない!」
だって可哀想じゃない!
あなたはそんな必死な私を見て
ただ優しく微笑んでいた
これは困ったなという顔をしていたけれど
それでも、私はうれしかった
お芝居も後半に差し掛かり
あなたは時計を気にしだした
あなたはこのまま行ってしまうの?
そんなの嫌!絶対に嫌!
でも私には
あなたのコートの裾を掴む勇気なんかなくて
一体どうしたらいいの?
その言葉だけを呪文のように何度もつぶやいている
戻る
編
削
Point
(1)