未完の歌/和泉 誠
私はね、自分の話をするのが好き
それを誰かに黙って聞いてもらえるのは
もっと好き
わあ、君ってすごいねって言われるのは
もっともっと好き
だから私は嘘をつくの
正しい私、綺麗な私、清らかな私だけを
みんなにはご披露するの
悪い私、醜い私、汚い私は邪魔だよって
部屋の隅へと追いやるの
そうすればたしかに私は
みんなからすごいって誉めてもらえる
でも、それって当たり前でしょう?
そんな自分が嫌いなの
舞台のスポットライトに照らされて
素敵な笑顔を振りまいてる一方で
楽屋の隅で泣いてる子がいる
だから私はみんなを一緒の舞台に立たせたの
そしたらやっぱり
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