初恋/ふう
繁殖するキウイの輪切り
あなた 傍で眺めていて
色づいていく
街の中はロマンスであふれていて
すっぱいね
味なんてしなかったけど
そう言ってみて
お互い確認しあって、噛み付いて
最後の一切れまで食べ尽くした
それから
まるで当たり前のように
あなたもわたしもいなくなって
アルバムは広げられたまま
何人も、何人ものひとがその上を歩いていき
時々思い出したように
忙しない足音を埋めてゆく
わたしは部屋にひとり
ああ、そんなこともあったっけって
笑って 空っぽのおしゃべりして
キウイ
うすく うすく切って
ひとつひとつ名前を付ける
どうか
どうかこのまま気が付かないでいて、と
いくつもいくつも並べるているの
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