今年最後の海/岡村明子
 
今年最後の海を見に行った

午後六時
駅から海までは住宅街の中をしばらく歩く
にぎやかな町ではないので夜は早い
ビルディングの間からは見えない星座がたくさん瞬いている

海岸沿いの国道にでると向こうはすぐ海だ
そこまで行けばもっと星が見えると思ったのは間違いで
ランプや車の明かりでかえって眩しい
海はそこにあるはずなのに
波の音も聞えない

誰もいない夜の砂浜に
おそるおそる降りる
砂に足をとられながら波打ち際を目指す
誰もいないので叫びたくなる
ぐるぐると回りながら
ポエトリーリーディング!


波の音が近づいてくる
海は黒く横たわり
夜空の下で大き
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