眠くて仕方が無いと母は言う/Six
 
眠くて仕方が無いと母は言う
こんなに眠くて仕方が無いのは
悪いことが起きるから
それとも脳梗塞なのかしらん
雑煮の鍋を温めながら
迷信深い島の年寄りの顔になる

庭には
他の樹木とは、まるで調和のとれていない
ばかでかいソテツの木

お重に詰められた正月料理は
千代紙のようにくすんだ色あい
かずのこ、黒豆を
わたしは箸で
つまんでは口に運ぶ

久しぶりに来たわたしと夫に
みみこ(犬、十四歳)が
嬉しそうに愛嬌を振りまく
新しいパソコンを買ったのだと
父は得意気に言う

蛍光灯が白くて眩しい
暖房がきき過ぎなのだここは

かずのこ、黒豆

母は眠い目をこすりながら
いつの間にか育ってしまった
大きなソテツに水をやり
父とみみこと夫とわたしのことを
順番に心配して
夜は一番最後に床に就く

冷蔵庫が静かに唸る台所で
お重に残った正月料理が
ほんの少し、傷んでくる
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