スカート/りぃ
 
お前は不器用な人間だなァ。

と夕暮れの日
放課後のあのたわいも無い会話の中で
先生が言った

私は彼の目をジと見つめた
彼は気にした様子も無く進路の話をひたすらに

器用な人間など
果たして存在するのか
その判断は誰が下すのか

スカートを握り締めたこぶしは汗をかいている

進路についての悩みを聞く彼に
幼き私は正直に答え

親には言わないで下さい

そう頼んだ。
彼は笑顔で分かったよと答えた。

どうしてあんなに簡単に信用できたのだろう

グランドでは部活動をする同級生の声が聞こえる
吹奏楽部のヘタクソなオーケストラ
校庭の池の水の流れ

開け放たれた窓からそよぐ風
舞いあがるプリント
飛んでいったチョーク

あの日と同じ、今日この日に
彼は親に言うのだ
私はそれを黙って聞くのだろう

お宅のお嬢サンは少し不器用ですね―…

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