全自動洗濯機/蒼木りん
たとえそれが死臭だったとしても
鼻裏にこびりついて
いつも離れない気がしても
今日の仕事は
こなさなければならない
できなければ
死刑宣告
きっとそうだ
あれは
死刑にされた人間の死臭に違いない
鼻から脳に入り込んで
とり憑く気だ
エゴイストエゴイストエゴイストエゴイストエゴイスト
洗濯機がまわる
どうだ
試練とはこんなものではない
僅かに貯めた金さえ
いっぺんにむしり取る気だ
私の価値観は
覆されるのだ
私がそれを受け入れるまで
纏わり付く気だ
どちらも
同じ重さになるまで
あれは死臭だ
きっと
そうに違いない
花が開くまでの
夢見る時間は過ぎたのだ
そして今度は
死を受け入れるまでの
試練を繰り返すのだ
エゴイストの脱水機が
フェードアウトする
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