凶暴性ウイルス/りぃ
私はただ其れだけを持っていたのだと思う
真っ白な脳内に響くエラー音
警告音にも気づけずに
足元に転がっていた停止した名も無き住人
私はただ何処までも走りたかったのだと思う
真っ赤な残像に良く似た夕陽
あの夕陽を手に入れれば
この痛みすらリセットされる気がしていた
都合の良い夢を見ていたに違いない
放って置いても
明日はやってくるのだからと
勘違いも甚だしい
ああ、この体、凶暴性
直らないと分かっていても期待してしまうのは
私がまだ幼いからだろうか
一欠けらの期待も捨てられない私は
ただナイフを持ち
君の肉を切り裂いて
そしてただ
逃亡するウイルス。
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