北風の工場/
ベンジャミン
が叩くのと同じようなリズムで
北風をつくっているのだと
妹の小さな手は
しっかりと私を握っている
さっき指さした雲が消えてしまっても
お互いの手の内に守られた
このわずかな温もりのために
今日も遠い北のはずれでは
北風がつくられている
そんな話を思い出すとき
風はいつも向かい風なのだけど
そのことを妹にさとられないように
私は他の雲を指さして
「ごらん、あれがお兄ちゃんだよ」と
妹の顔が一瞬ほころぶのを
大事そうに見つめていた
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