月がらんらん/蒼木りん
 
月がらんらんなので
夜道は寂しくない
それでも人は
箱車で移動して
この寒さから逃れる
コンビニにはいつも
おでんの汁の匂いがして
煮物の匂いはしないから
飽きた
早く家に帰ろう

あの円の中に
吸い込まれたら
消えかけた楽園に
行けるかもしれない
空はどこまでも遠くて
上なのに下なのだろう
いや
横だ

地球に見放されて
いつ
投げ出されるかわからないのに
人は悪癖をくりかえす
私もまた
希望は据え置き
荒療治

人を殺しては為りません
それでも
殺さなければ殺される
欲が人を殺してる
金を積んで
死なせてくれる商売は
リクエストと見積もりで
熟練を要さない
よくもこの国は
猿回しの国に成り果てるのだ

薬臭いきゅうりの漬物は
やめまして
納豆も
おにぎりも
あれは
ご飯じゃなくて
銀シャリという食べられるもので
おばあちゃんの
煮物と漬物と
ねぎ味噌は
亡くなってしまいました

月がらんらんなので
しづかな夜です
もう
しづかに寝ませう


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