カステラ/松本 涼
やがて夜になり朝になっても
君は歌い続け
僕はそれを見上げ続けた
それからどのくらい
時間がたったのか分からない
ある時パラパラと
雪が降り出した
雪は次第に強くなり
僕の足元にも積もっていった
そうして僕は
高く積もった雪の上に立ち
やっと君の歌に
触れることが出来た
僕はそっと
電線に絡みついた君の歌をほどいて
両手で包み込み胸に抱えた
それはほんのりと暖かく
僕は喜びの中で
久しぶりにぐっすりと眠った
そして今もまだ
君は歌い続けている
僕はとても幸せだ
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