禁色の人/ヤギ
私はあんなに憎い人を知らない
穏やかに過ごしていた日々を
圧倒的な力で根こそぎ運びさり
最もうとんだ葛藤と労苦の
深くにごった河へ流し込んでしまった
こんなところで生きてゆけない
満身の力をふりしぼり息も絶え絶えにぬけだす
不思議なことに果てに残るものはいつくしみだった
それは柔らかく清らかで私の土から生えた若草だった
だからまた、その一つかみの花束を手に
ずぶずぶと戻ってしまう
父と母のいたあの河へ
後悔と絶望といたわりのもたらす希望とを何度も何度もくり返す
私は馬鹿になってしまった
雨は全てのはじまりという
幾万の雨滴が寄り集まって川となり
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