ボディピアス/あまくちペルノ
て、もう二度と戻ってくる事はない。
だけど、この穴がひとつあれば、その頃は
なんでも乗り越えられるような気がした。
私の希望のような気がした。
自分に印がついた事が誇らしくさえあった。
その後しばらくは穴の存在は薄れ、忘れられていた。
忘れて、こんな穴なしでも生きていける。
私は耳じゃなくて胸の中にその心を背負っていこう。
そう忘れられた筈だったのに。
昨日下北沢で、気がつくとピアスを手にしていた。
店員に商品を手渡す。白いトカゲのボディピアス。
店をでる。出来るだけ急いで。
袋を破く、台紙をめりめりと剥がす、乱暴にそれを
耳の裏にあてがい、押し付ける
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)